民話・唐丹物語~孫太郎と山賊

 by Chiba

 

 大石で生まれ育った母から、こたつでよく聞いていた話です。

 昔、大石にはたいそう金持ちの家がありました。わかたといって、気仙(けせん)で一番、税金を納めていたそうです。

 その頃、税金は盛(さかり)の役所に納めることになっていました。わかたでは、しっかり者の使用人、孫太郎に届けさせることにしました。

 孫太郎が盛をめざし山道を歩いていると、一人の山賊が現れました。山賊は、孫太郎がわかたのお金を持っていることを知っていたのです。孫太郎に切りかかり、かわいそうに孫太郎は死んでしまいました。

 山賊はお金を必死にさがしましたが、どうしても見つけることができません。目をつけていた背中の風呂敷包みの中には衣類が入っているばかりでした。

 悪いことはできないもので、孫太郎を殺した山賊はまもなくつかまりました。そのとき、役人に「孫太郎殺してみても、金はなし」とくやしそうに言ったそうです。

 じつは孫太郎は、ちゃんとお金を持っていました。脚絆(きゃはん)*の中に隠していたので山賊は見つけられなかったのです。

*すねに巻き、ひもで結びつける布。

 

大石とわかたの伝承については、唐丹漁協のホームページにもっとくわしい話が掲載されています。私が母から聞いたのとは、ちょっと違うのですが、まあ、お話ですから。

唐丹の民話・1話「大石地区」 (←をクリックすると、PDFファイルが開きます)