花は咲く

 by Chiba

 

 テレビから流れる「花は咲く」を聴いていて、「あれっ」と思った。

  わたしは何を残すだろう

 「残す?」

 現在形だ。亡くなった方が語っているのであれば、動詞は過去形になるのが自然だろう。

 でも、これはこれでよいと思った。

 亡くなっても、心が受け継がれたなら、きっと何かできる。

 生きている側が、亡くなった方の思いを形にしていくなら、何かを残せるだろう。

 

 ほどなくして、ネットで

  NHK「花は咲く」歌詞1カ所変更 東北地方向け放送

という見出しを見つけた。

 昨年、作曲者の菅野よう子さんが変更を提案し、作詞者の岩井俊二さんが了承したとのことである。

 3回語られていた「わたしは何を残しただろう」は、最後の1回が「わたしは何を残すだろう」になった。

 

 震災から4年たち、生き延びていく姿勢が語られるようになったのかもしれない。

 胸いっぱいの思い出をかかえては生きていけない。

 ただ、どれだけ時間がたとうと、東日本の太平洋岸の風景を一変させた地層が消えるわけではない。心も、たぶんそうなのではないか。寒く長い夜、泥におおわれた町、そのにおい、たくさんのハエ、移動電話の順番待ち、給水車までの道のり、、、記憶は日常に埋もれてはいるが、消えたのではない。

 「花は咲く」は、その記憶に寄り添う歌なのだと思う。その大地で響き合う。

  いつか恋する君のために